成り立つならば

 国は全体的に白かった。石畳から壁、屋根に至るまで全てが白く塗装されているか天然の物が使われ、行き交う者達も白を基調とした衣服を好んで使っている。そうでなければ淡い色が好まれる。華美な装飾や色合いは嫌がられ、変わりというように緻密で繊細なものが好まれる傾向にあった。 「お嬢さん、とても綺麗な毛皮だね。どうだいうちの着物を持っていっては。もちろんお代はいらないよ」 「ちょっと、黒だなんてやだねぇ。店に入らないどくれ。……ええ? あんたのお連れさん? なんだそうならそうと先に言ってくれよ!」 「そこの白いお嬢さん! 是非とも大学へ行きませんか。もちろん奨学金を約束致します」 「歌姫に興味はありませんか? なに、旅の方? でしたら国民登録をしましょう。あなたなら書類一枚書くだけですよ」  すっぽりと頭までフードを被ったハルは疲れ果てたように座り込んだ。その横で、同じようにしたダグラスも。 「黒と白、色で相当差別されるな」 「僕は嫌悪か、いない者として扱われています」 「見世物じゃないのよ……じろじろじろじろと!」  都心から外れた郊外の農村部で、屋台で買ったサンドに噛みついた。ぱりぱりに焼かれたパンの表面が音を立てた。屋台でやたら愛想の良いおやじに値引きしてもらったものだ。 「ボクらは何とも無いよ!」 「そうだな」  白は尊ばれ、黒は忌避される。  体毛が濃ければ濃いほど差別は顕著で、裏道にはそういった者達が多い。隠すために全身に白粉を叩く者もいる始末だ。 「王族が白を推奨しているせいもあるのでしょうが、階級でさえ左右されるとは」 「これじゃ悪魔の方がまだマシよ……二つにちぎってしまえるもの」 「旅行者が多い時期でよかったな」  そうでなければもっと目立っただろう。最悪ダグラスは入国も危うかったのではないか。 「こんな噂聞かなかったわよ……」  ぼやいたハルは、噂が数年前の物だったのを思い出す。一同は首をかしげた。 「ここ最近広まったのか?」 「差別は中央に行くほど酷いわね」  と言うよりも、とダグラスは嘆息する。 「中央ほど白い物が集められ、端に行くほど色が混じっています」  黒い毛に埋もれるような爪が地面を削る。大きな丸は国の形。その中に円を二つ、重ねるように足したダグラスは中心に白、次に灰色、その他と書き込んだ。最後に神木をかたどったイラストを中心に描く。 「歌祭が開催されるのは前日際から三日間。入場規制は無いようですが歌姫を決める開場は王宮の庭。一般の者は遠くで歌声を聞くようです」  その日だけは入場規制があり、歌姫候補と審査員を除き、開場には誰も立ち入れないことになっている。 「無事に出場登録できるのかしら……いえ、わたしがやってくるわ。そのほうが簡単に住みそうだもの。受付は王城の前だったかしら」  疲れたように嘆息する彼らに暖かい風が吹いた。春告げ鳥の歌が耳朶を打ち、草木の囁きと日の暖かさが肌に浸透する。  花々は蕾を開きかけ、本格的な春の到来を告げようとしていた。 「それにしても歌祭に神木かぁ。周りが全部白い人達ばかりだなんて、まるで獣が神木と一緒にいるような感じだな」  ふと呟いたカリオンに、吸い付くように視線が行く。驚愕に見開いた六つの瞳。遅れて彼も閃いた。 「まさか」 「メディラは気が狂ってるとレイディミラーは言ってたわ。でも、どこよりもこの国は安定してる」 「騙しているって言うのか? ヘリガバーム教団でも獣の存在は知らなかったんだぞ」 「あなたは知ってたじゃない」 「それは俺が混血児だから……この国にも居るのか?」 「わかりませんが、どこかで正確な事が伝わっているのかもしれません。調べましょう。一刻も早くこの国の事を調べなければ」  出てくるのは優しい現実であるはずがない。ダグラスは心臓に冷たい手を当てられたかのように腹の奥が冷えた。 「やはり二手に分かれましょう。登録している間に教会に手紙と近況を聞きに行ってきます」 「一人じゃ危ないわよ」 「僕はこれ以上、何一つ取りこぼしたくないのです!」  と、その時。  背後からかかった大きな影。見上げれば巨大な悪魔が腕を振り上げていた。  カリオンが叫ぶ。 「ダグラス伏せろ!」  攻撃をそらすように叩き付けた拳が悪魔の腕を砕く。  牛の頭に大きな角が四本、筋肉の鎧に浅黒い肌、下半身は爬虫類。中級の悪魔。  飛び退いた悪魔は鼻息荒く前足を地面に付けた。突進の合図。  見回せば十を超える悪魔が包囲し、遠くでも悲鳴が聞こえ始める。鳥が逃げるように羽ばたき、植物が踏み荒らされる音。動物がぎゃあぎゃあと逃げ出している。 「巨鳥だ!」  神木が間近にあるこの場所に、示し合わせたかのように現れた悪魔達。  目的は何だ。  考えながら突進してくる悪魔を迎え撃つ。抜き放った鉄剣が鞘にこすれて歪な音を立てた。丸太ほどの腕を受け止めなぎ払うと一度体制を立て直し、角を根本から叩き折った。  舌打ち混じりに踏み込んで犬の頭を持った悪魔を切り伏せる。 「爬虫類型の中級に熊と牛と……あれは何でしょう。あぁ! 酸を吐くキメラじゃないですか。でっぷりした豚にしか見えないのでわかりませんでした。アレの胃を切ると酸がまき散らされるのでやっかいですね……悪魔ばかりが、なぜこんなに」 「何か狙ってるんじゃないの?」  身を捻りながら宙返り。その下に突撃してきた巨鳥の羽の付け根に剣を滑らせれば、墨汁のような血が噴き出した。落ちた巨鳥を蹴り飛ばしたカリオンは首の骨を踏み折りとどめをさし、背後に迫った巨大な爬虫類型の悪魔を切りつける。  耳障りな悲鳴と共に雷撃が降り注ぐ。地面がえぐれ焦げた臭いと煙が辺りを包んだ。 「ハル、平気か!」 「誰に言っているの」  目をつむり、開ける。  火のように染まった双眸を追うように残像が赤い線となって後方に流れる。  体ができてから驚くほど全てが整った。神力の循環、発動が円滑になっている。  自然と口の端がつり上がり、悪魔からこぼれる芳醇な香りに高揚する。  舌なめずりをしたハルは怯えたように怯む巨鳥の首に飛び乗ると齧りつく。暴れ、ふるい落とそうとしながら旋回し、巨鳥は悲鳴を上げながら墜落した。 「なんて野蛮な」  思わずダグラスが呟けば横にせまった悪魔をカリオンが切り、ちらりと見やる。 「悪魔はうまいんだぞ。新鮮だと凄く甘いんだ」 「そうですか……」  種族の壁を感じたダグラスは黙る。雑談の間にも悪魔は次々と切り倒され、遠くにいた悪魔も警戒するように距離を取り始めた。目の前で仲間がむしゃむしゃと美味しそうに食べられたら誰だって二の足を踏む。 「一気に片付けてくるわ。カリオンは、モリトの側にいて」 「ボクも一緒に行く」  巨鳥の足を引っこ抜いたモリトは振り回しながら感触を確かめている。半眼になったハルは、 「だめよ」 「なんで!」  嘆息した。 「危ないでしょう」 「ボク、平気だよ。おかあさまもハルと一緒にいるように言ってたもん」 「俺も一緒に行くぞ。数が多いからな」 「……じゃあ、皆で行きましょう」  こうなったらてこでも動かない。再び嘆息したハルは歩き出した。歓声を上げたモリトが後に続く。その手に握られた巨鳥の足から血がぱらぱら落ちた。  モリトが手近に居た悪魔の頭を巨鳥の足で砕く。上がる血しぶきに「えい」という幼い声が不釣り合いだな、と思いながらハルは苦笑する。モリトはどんどん先に行く。それを追いかけながらハルもまた、襲いかかる悪魔の首を綺麗に飛ばす。 「ねぇハル、あっちから声が聞こえるよ」  振り向いたモリトの目はどうしよう? と問いかけてくる。それを見ながら少しだけ成長を感じた。いつもなら行ってみようと真っ先に近づいて行く。その横に並んだカリオンが木々の合間から見えないかと目をこらす。 「誰か襲われてるな。行ってみるか?」 「うん!」  ときどき羨ましくなるほど仲の良い二人は手を繋いで歩き出した。片方にそれぞれ物騒な物を持っているものの、何だか本当の兄妹みたい。ハルは少しだけ羨ましいし、疎外感を感じる。カリオンは正直だし、ハルのように捻くれていないから彼を慕う人は多そうだ。  女と男では友達になってもやはりどこか違う物がある。それは嫉妬だと気付いていたし、口に出すほどの物でもない。 「あ、ちょっと待ってください。断面図を書きたいのですが」 「……はやくして」  ハルは駆け出す二人を見失わないようにちらちら見ながら、ダグラスが慌ててスケッチをする傍らで待った。 「ねぇ、それどうするの?」 「悪魔大全集と言う本があるのですが、それに追記できればと思います。中身がわかれば急所も捉えやすいでしょう?」 「ふーん。……ん?」  スケッチを覗き込んでいたハルは首をひねる。 「丸ごと検視できればいいんですが、殆ど新鮮な内に薬や何やらになったり、そもそも見られなかったりして、なかなか情報が集まらないのです」 「魔薬屋と課金屋に頼んだ事はないの?」 「あっ!」  ダグラスは気がつかなかったというように、素早くふり返ってハルを見た。耳がピンと立って毛がぶわっと広がっている。  神官は抜け作ばかりだ、とハルは半眼になって腕を引っ張り後を追う。  が、大部分が討伐され残りは少数だ。周囲を見回すと所々青い刺繍に虎の顔を形取った紋章が縫い込まれた制服を着た一団が、円を描くように集まっている。中心に居る兎人の女性を守っているらしい。近づくと彼らは一様に警戒した表情をしたが、襲いかかってきた猿系の悪魔に一閃。首と胴が断ち切られるのを見て動きを止める。 「この人達としばらく一緒に居てくれる? そこら辺に散らばってる悪魔を殺してくるわ」 「わかりました。お気をつけて」 「うん」  素直に頷いたハルにダグラスは若干戸惑いながら見送った。  ふり返った彼女の目尻はつり上がり虹彩が黄金に瞬くと飛び出した。 「終わりか?」  死屍累々。  鼻が曲がりそうなほど甘ったるい中、ハルは振り返る。 「みたいね」 「ボク、お腹すいた!」  モリトは腹をさすって、持っていた肉のそげた足の骨を放り出す。びしゃりと音を立てて血だまりに沈んだ。 「そろそろ騎士が駆けつけるだろうから、行くか」 「お待ちください」  やれやれ、と踵を返せば灰色狼の獣人が待ったをかける。私服は血で真っ黒になり、剣は半ばで折れていた。  声がした方に居たのは、例の兎人とその護衛らしき灰色の人狼。 「食事でしたらこちらでご用意させていただきたい。我が主がお招きしたいと申しております」 「主?」 「初めまして、アイリーンと申します。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」  しずしず出てきた女性は、そう言ってぽーっとカリオンを見ている。ちらり、と見上げたハルは頷いた。 「行ってきなさいよ。わたし達は宿の所でご飯を食べるから」 「えっ!?」 「皆様で王宮にお越しを。当代一の歌姫候補を救い出した事を知れば、皆様をお招きしなかった事を叱られてしまいます」 「歌姫候補? お姫様とは違うの?」  モリトの言葉に、彼女は屈みながら答えた。 「そうよ、坊やは知らない? 今度の歌祭で歌う者は皆、歌姫候補と呼ばれるのよ」  アイリーンはうふふ、としなを作りながら微笑む。白い毛皮が柔らかそうで、むちむちした体も女性的。彼女はちらりとハルをみて鼻をならす。――性格はあまりよくないらしい。  ハルが自分の体を見下ろせば、なだらかで凹凸は少ない。だがダグラスと同じくらいの身長になっているし、幼児期を抜け体重は増えたが力も増して足も長く、速くなった。<神眼>の使い方もうまくなっている。  ハルは嘲笑を正面から見返す。恥じることは何一つない、と言うように。  横で微笑ましそうに見下ろすカリオンとハルを交互に見て、彼女は不機嫌そうに顔をしかめた。  そのとき、おそらく騎士隊が駆けつけ、人狼の周りに集まってくる。 「到着が遅い。貴様らの足は亀並か」 「申し訳ありません」  鋭い叱咤が飛ぶ。どうやら力関係は彼が上のようだ。  萎縮した彼らを一瞥し、彼は続ける。 「お前達、この方達を王宮の客室へ案内を。アイリーン様をお助けくださった方々だ。くれぐれも粗相のないように。流石に頭の中身は亀よりも速く動くだろうな。――皆様、彼らがお送りいたします」 「入城できるほど教養はないわよ」  鉄剣を払い、付着した血肉を飛ばす。口元の血を舐めとれば既に乾いていた。  彼はその様を見て懐から布を指し出す。なんだろうと見上げると、顔を顰め強引に口をぬぐってきた。 「ちょっと!」 「失礼しました。しかし加工もしてない物を口にするのは如何なものかと」 「だったら言えばいいだろう。この子に気安く触るな。あとそのハンカチ洗って返すからよこせ」 「わたしがやるわよ! 触らないで」  ささっと両肩に添えられた手を叩き落とし、ハンカチを奪い取るとカリオンは目に見えてしょんぼりした。ふっさりとした耳が水平になるのを見て「へ」の字に口を曲げたハルは、小さく息を吐く。 「まぁ。なんて乱暴な方かしら。私が慰めて差し上げますわ」 「え?」  アイリーンがするするとカリオンに近づくのを横目で見ながらモリトの顔についた血を、ついでとばかりにハンカチでぬぐってやる。  じっと見つめていた人狼を見上げてハルは肩をすくめた。 「お湯を貸してくれるわよね?」 「行くんですか?」 「しょうがないじゃない。……しつこそうよ」  ダグラスはちらりと周囲を見て、ですよねと言うように頷いた。 ★★★  王宮は塔が連なったような形をしている。階段が多くどこも清潔に保たれていた。毎朝の掃除は骨が折れることだろう。  塵一つない客室の風呂場を借りてハルはこびり付いた血を丁寧に落とす。ついでに備え付けの石鹸でハンカチを洗って干しながら、はふりと湯船に浸かっているモリトを見る。  湯船は大きく、大人が泳げるほど広かった。ここまでの待遇をさせるほど歌姫候補アイリーンは大切にされているのだろう。  しばらくとけたような顔をしたモリトを眺めた後、意をけっしてハルはお湯に足を浸した。  その外で、聞こえる楽しげな声にカリオンは頬を染めながら耳をぴくぴく動かす。頬は赤く紅葉して目が潤んでいた。  風呂場から最も遠い位置で背を向けるようにしている彼に、ダグラスは見てはいけないものを見たような気分にさせられる。 「いいかげんそんな所にいないで普通にしてくださいよ」  高速で振られる頭に嘆息が出る。 「お風呂に入るくらいで毎回顔を赤らめて……そろそろ慣れてもいいんじゃないんでしょうか? よこしまな想像をしてるわけじゃないでしょう?」 「な、なっ! ……変態め。そういう想像はするな!」 「もう。なんでこんなに乙女なのか……」  汚らしい大人を見るような顔にやれやれと頭を振って立ち上がる。変な所で純情な青年は、思春期の男の子みたいだ。特に成長期を終えた彼女を前にソワソワして、毎日花を摘んでは手紙に添えてそっと指し出している。時々手縫いのマフラーやら手袋など送りつけて甲斐甲斐しいやら重いやら……乙女か。  家事一般は完璧でこの純情さ。女だったら男共が放っておかなかっただろうに。ついつい考えたダグラスは、ノックに慌てて返事をする。 「失礼します。何か足りない物はございますでしょうか」  使用人はきびきびと頭を下げて問いかけた。 「いえ、十分です」 「ではお召し替えのご衣装を用意させていただきましたので、こちらにお着替えください。エイディ王が皆様を晩餐に招きたいと仰っております」 「国王陛下が!」 「歌姫アイリーンはこの王宮で随一の歌い手。王は皆様に直接お言葉をかけたいと」 「それはそれは。僕らのような者に過分なお言葉を。しかし下賤の身ゆえ、何か失礼をしてしまうのではないかと心配です。お気持ちだけ受け取らせてください」  使用人は一瞬ダグラスに不快な視線を向けると頷く。 「では、そのようにお伝え致します」  しずしずと去って行く背中がドアの向こうに消えたあと、彼は小さく嘆息した。 「大丈夫か?」 「安まりませんね」  苦笑しながら返す。用意された部屋は最初個室だったのだが、ダグラスを心配して一室に集まっていた。あからさまに不快感をもたれているのがわかる以上、一人にはできない。  困惑気味のカリオンは腕組みをしながらしきりに首をかしげた。 「どうして体の色で差別するんだ。生きていくのに何も関係無いだろうに……」  と、 「文化がある程度成熟しているせいじゃないの?」 「お風呂上がったよー。おっきかった!」  ほかほかになった二人は頬をピンク色に染め風呂場から出てきた。  ハルは不快そうに出入り口のドアを睨む。 「嫌な使用人ね」 「……聞こえていましたか」 「案外壁薄いのね」 「文化がある程度成熟しているって、どういうことだ?」 「安定した生活をおくれば自然と気が緩む。そうすると些細なことが積み重なって差別が生まれるわ。敵を作らずにはいられないものよ。特に日々が平穏なら」 「満ち足りた生活を送っているのにですか?」 「本当はね、ある程度ストレスがなければ生きていられないの」  ふぅ、と嘆息したハルは目を細めて風呂に入ってくるように促した。とたん、ぎくしゃくするカリオンに小首をかしげながら、ベッドに二人並んで座る。  モリトの髪の毛をタオルで拭けば、くすぐったいのかきゃらきゃらと笑い声が上がる。 ――コンコン。  再びのノックに手を止めたハルは扉を開ける。ゆっくりと視線を上げれば虎の顔を形取った紋章――騎士服。襟からでる顔には先ほど見た狼の頭が乗っている。  あの後ジハールと名乗った灰色の人狼騎士だ。彼はハルを見下ろすと「晩餐の用意が調っています」と告げる。どう言う事だ。 「さっき断ったはずよ。そう伝えたけれど……入れ違いになったのかしら?」 「晩餐は無くなりましたが、王は是非お食事を共にと。私的な場ですので作法なども気にせずともよいと」 「それが下々のことを本当に考えた言葉なら最高の君主ね」 「老王は気さくな方です。お会いすればわかるかと」  強ばったハルの顔に彼は準備を促した。