ある、冬の洞で
モリトとハルがレイディミラーの洞から旅にでる前の話。 モフモフ。 ---------- 背中に乗ったモリトが、急に胴体をべたっとつけてきた。 両手両足が腹にまわったかと思うと、わしゃわしゃとかき混ぜられる。 「モリト、何してるの?」 「もふもふしてるよ!」 「ふーん? ただいまー」 小首をかしげながらレイディミラーの洞に入る。中は暖かくてハルは足を折る。するりと降りたモリトは駆け足で離れ、ブラシを持って戻って来る。 その間に体についた雪を飛ばしたハルはくつろぐように寝転がった。前足で顔を洗うと、ブラシの先が耳の後ろに触れた。 「ねぇ、もふもふしたい」 「すれば良いじゃない」 「どこが気持ちいいのか教えてくれる?」 「うん」 機嫌良く尻尾を振ると、投げ出されたモリトの足の上に頭を乗せる。 「そこ! 右!! あ、もっと優しくして」 ぐるぐると喉を鳴らしながらハルは身を任せた。 それを見守っているレイディミラーは昔の事を思い出す。 かつて歌って暮らしていた頃、獣の毛並みを撫でさすり、時には懇願され、つくしたものだ。 数千年にわたる老練なモフリストは、精神体を取ると一緒になってハルを撫でモフり始めた。 ---------- その日、かつてないほどつやつやのぺかぺかになったハルはご機嫌で眠りました。