ある日のカリオンくん。

リノンへ向かう道すがら、カリオンくんはしょんぼりとしていました。 耳が水平になっています。 「どうしたんです?」 ずいぶんと前に行ってしまった二人を見ていると、隣にいるダグラスさんが聞いて来ました。 「なんで俺だけ触らせてくれないんだろう」 手を指し出すと、叩き落とされたときに腫れたのか、真っ赤な紅葉の痕があります。 ダグラスさんもモリトにもハルは乱暴な事はしませんが、カリオン君の手は叩き落とします。 透けて見える下心のせいかもしれません。 ははあ、と訳知り顔のダグラスさんはこっそりと耳打ちしました。 「しつこく触るからですよ」 「それってどう言う事だ?」 「ずーっと同じ所ばかり触らないでささっと、いろいろ撫でてあげればいいんです。最初に触るのは許してくださるでしょう?」 半信半疑ながら、その日の野営地で、ブラシを取り出したカリオン君はハルの毛をすきました。 最初は警戒していたハルは「あれ?」と首をかしげながらも大人しく、お膝の上に乗って最後までブラシで毛をすいてもらいました。 そして、微妙な顔をしながら「ありがとう」と始めてお礼を言ったのです。 バラ色に変わった表情を見て、こっそりとダグラスさんは微笑んだのでした。